健やか親子21では、親や子どもの多様性を尊重しそれを支える社会や児童虐待のない社会の構築を通じて、すべての子どもが健やかに育つ社会の実現を目指しています。

 


 

体罰・暴言は子どもの脳の発達に深刻な影響を及ぼします。

脳画像の研究により、子ども時代に辛い体験をした人は、脳に様々な変化を生じていることが報告されています。親は「 愛 の 鞭 」のつもりだったとしても、子どもには目に見えない大きな影響を与えているかも知れないのです。

・厳しい体罰により、前頭前野(社会生活に極めて重要な脳部位)の容積が19.1%減少
(Tomoda A et al., Neuroimage, 2009)
・言葉の暴力により、聴覚野(声や音を 知覚する脳部位)が変形
(Tomoda A et al., Neuroimage, 2011)

「愛の鞭ゼロ作戦」リーフレット制作メンバーへインタビュー

認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事の高祖常子さんに“愛の鞭ゼロ作戦”についてお話を伺います!はじめに、このリーフレットはどのような想いがあって生まれたものなのでしょうか?

厚生労働省の「妊産褥婦健康診査の評価および自治体との連携の在り方に関する研究」(研究代表者 立花良之先生)研究班で、「子どものしつけには体罰が必要」という誤った認識・風潮を社会から一掃することを目的として、養育者が活用しやすい、支援者が利用しやすいリーフレットを作成しようということになりました。

その研究班の会議で、私が実施している「叩かない怒鳴らない子育て講座」のことを話す機会がありました。子育てに叩いたり怒鳴ったりは不要ですし、子どもの育ちにとって叩く怒鳴るは逆効果であること、
そしてそれを広く伝えていくことが大切であること、子どもへの体罰・暴力を禁止している国が世界で50カ国以上あることなどを話させていただきました。

リーフレットを制作する過程で特に意識されていたことは、どんなことですか。

一番は「愛の鞭ゼロ作戦」という言葉です。広くみなさまに伝わるように、わかりやすくキャッチ―な表現、さらにはみなさまに受け入れていただきやすい表現であった方がいいということで、たくさんみなさんと議論を重ね、その過程では、「愛の鞭ゼロ作戦」の言葉が、何度か消えかけたこともありました(笑)。

でも最終的には、「愛の鞭ゼロ作戦」の言葉が残り、とてもよかったと思っています。

他のこだわりも教えて下さい。

制作する過程では、文字数が多すぎず、手に取っていただきやすいデザインやイラスト、そして全体の雰囲気にも気を配り、何度も研究班メンバーのみなさまと内容について推敲しました。

また、福井大学の友田明美先生にも協力いただき、体罰などを受けたことによる脳の影響のイラストも掲載しました。こちらの掲載も、乳幼児の親が手に取るリーフレットとしてはインパクトが強過ぎないかなどの意見もありましたが、最終的にはほかの研究結果と共に掲載することになりました。読んでいただいた方への説得力を増すことにもなり、よかったと思っています。

リーフレットに掲載されている5つのポイントを選定された理由を教えてください。

1. 「子育てに 体罰や暴言を使わない」は、まず親が叩いたり怒鳴ったりしないと決めることを。
2. 「子どもが親に 恐怖を持つと SOSを伝えられない」は、体罰や暴力によって追い込まれる子どもの気持ちを。
3. 「爆発寸前の イライラをクールダウン」は、体罰や暴力を使わないために、イライラの爆発をどうしたらいいのかを。
4. 「親自身がSOSを出そう」は、大変なときには親自身が助けを求めること(受援力を持つこと)を。
5. 「子どもの気持ちと行動を 分けて考え、育ちを応援」は、子どもとの向き合い方のポイントを書いています。

とてもシンプルですが、この5つのポイントを押さえて意識することによって、子どもへの向き合い方が上からの威圧ではなく、横に立って応援する位置に変わってくると思っています。そしてそのように向き合うことが、子どもを健やかに育むことにもつながるため、この5つをポイントとしました。

このリーフレットをどのような方に、どのように活用して欲しいですか。

私自身、プレパパママ講座や子育て講座で配布させていただいていますが、妊娠中のプレパパにまず知っていただきたいです。そして、乳幼児期の子育てに奮闘しているパパやママにも活用いただけたらと思っています。

支援者のみなさまには、母親学級、両親学級、子育て講座や、こんにちは赤ちゃん訪問時、また乳幼児健診、妊婦健診などで、是非配布いただきたいです。

さらに、リーフレットのイラストや文章は乳幼児期の親向けに書いていますが、子どもへの向き合い方のベースは中高生になっても変わりません。ぜひ、思春期の子育て中のみなさまにも活用いただけたらと思います。

悩みや不安を抱えている親子にメッセージをお願いします!

子育てはみんな初めての体験。そして、親とは別な意思や感性を持つ子どもと向き合うことは、気力も体力も必要です。

子どもの気持ちを受け止めるには、親自身の気持ちの余裕が必要です。ぜひ、いろいろな手を借りて、心と体を癒しながら、子どもとの時間を楽しんでいただけたらと思います。子どもが思うように動いてくれない、親の意にそぐわないことを言うことがあっても、それは子どもが自分の意志を持っているという成長の証です。

いろいろな考えや感性を受け止めつつ、困った場面があれば、親子として家族として、どのようにクリアしていくのがいいのか、一緒に考えていきましょう。

親子を支える支援者にメッセージをお願いします。

「子育てに愛の鞭は不要」を共通認識として、子育てのサポートをお願いします。

親子にとってたくさんの専門家や支援者、気にかけてくれる近所の方が周囲にいること、温かな目で見守られていることはとても心強いことです。

困った親は困っている親、困った子は困っている子。ぜひ困りごとを一緒に見つけて解決の後押しをしていただけたらと思います。そして親自身、子ども自身が、自分で決めて動けるようにサポートをお願いします。

子育ての悩みを話せる人がいると心強いですよね!

今は家族の単位が小さくなっています。パパの帰りが遅ければ、ママと子ども2人だけでほぼ丸一日すごすこともあるでしょう。共働きの場合は、夫婦が限られた時間の中で家事・育児をしなくてはなりません。疲れたりイライラがたまると、ストレスが子どもに向かってしまうことがあるかもしれませんが、そんなときは、夫婦や家族、周囲の人と支えあいながら、行政などの支援も使いながら、子育てしていきましょう。

なるべくいろいろな人の手を借りて、また電化製品なども活用して、家族の時間を作れたらと思います。パパもママも子どもも、それぞれの目標や夢を持っているはず。それを応援しあえる家族であれば、暴力や暴言、虐待などにはならないのではないでしょうか。

子どもの年齢に応じた個々の成長や育ちを応援していきましょう。”家族が笑顔でいられているか”、それをぜひ我が家の指針にしていただけたらと思います。

「愛の鞭ゼロ作戦」リーフレットの他に、紹介したい参考になるWEBページなどあれば教えてください。

高祖さん、ありがとうございました!

認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事 高祖常子さん


認定子育てアドバイザー。資格は保育士、幼稚園教諭2種、社会教育主事(任用)ほか。

認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事のほか、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、NPO法人子どもすこやかサポートネット副代表、NPO法人タイガーマスク基金理事、にっぽんネウボラネットワーク研究所副代表も務める。

子育て支援を中心とした編集・執筆や、叩かない子育て講座ほか、子ども虐待防止や家族の笑顔を増やすための講演活動も行っている。

著書は『感情的にならない子育て』(かんき出版)、編著は『新しいパパの教科書』(学研)、『パパ1年生』(かんき出版)、『ママの仕事復帰のためにパパも会社も知っておきたい46のアイディア』(労働調査会)ほかがある。

また、プライベートでは3児の母。

認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークは、子ども虐待のない世の中を目指すオレンジリボン運動を推進する全国ネットワークの窓口としての役割を担っています。

『愛の鞭ゼロ作戦』リーフレットは、平成28年度厚生労働科学研究により作成されました。

平成28年度 厚生労働科学研究費補助金 健やか次世代育成総合研究事業
「妊産褥婦健康診査の評価および自治体との連携の在り方に関する研究」
(研究代表者 立花良之)
「母子の健康改善のための母子保健情報利活用に関する研究」
(研究代表者 山縣然太朗)