健先生
今回は、「高校生の性交経験と生活環境・保健指導について」についての調査結果をご報告します。今回が最終回になりますね。
やか子さん
最終回!とても大切なテーマですね。
ところで、この質問や今までのアンケート項目はどのような所が回答してくださったのですか?
健先生
はい、全国57の中学校・高校にご協力をいただきました。そして教室の中でこのアンケートに答えていただき、シール付きの封筒に入れてクラスで回収しました。
やか子さん
協力してくださった生徒さん、学校さんに大変感謝ですね。

高校生の性交経験の有無と悩みの関連性について見てみましょう

①性交経験の有無と健康感について(回答:高校生7,904人)

やか子さん
最初のデータは、生徒さんが性交経験をどう感じておられるかですね。
概ね、性交経験がある高校生も、ない高校生も健康感は一緒ですね。でも先生、7,904人の中で何人の高校生に性交経験があるのかわからないですね。
健先生
そのお答えは後でお示しします。やか子さんが言われたように性交経験があるから、ないからは、健康感と関係ないみたいですが、孤独感や死にたい気持ちとは少し関連がありました。
次のグラフを見てください。

② 性交経験の有無と孤独感について(回答:高校生7,895人)

やか子さん
性交経験がある、または性交経験のない高校生の中で、孤独感……これは「ひとりぼっちだと感じている子の割合」ですね。これも概ね変わらないように思いますが……。
健先生
グラフの左端のねずみ色の部分を見てください。性交経験があり、いつもひとりぼっちだと答えている人は4.5%でした。一方、性交経験がなくて、いつもひとりぼっちだと答えている人は1.5%でした。その差は3倍でした。
やか子さん
う~ん、なんかピンとこないですね……。そうだ、先生、反対にして見せてもらえますか?
つまり、いつもひとりぼっちだと感じている子の中にどのくらい経験した子がいるのか、そしてひとりぼっちだと感じていない子の中にどのくらい経験した子がいるのか?
健先生
わかりました。少しお待ちください……。はい、計算しました。
いつもひとりぼっちだと感じる子は138人で、そのうち19人、率にして14%の子に性交経験がありました。一方で、ひとりぼっちだとまったく感じていない子は3,242人で、性交経験のある子は169人で、率にして5%でした。約3倍ですね。
やか子さん
この子たちって、大丈夫かな……心配です。
ひとりぼっちで寂しいからって、悪い大人に騙されてないかなあ。心配。

③性交経験の有無とネットいじめについて(回答:高校生7,922人)

性交経験なしの生徒
(7,016人)


性交経験ありの生徒
(423人)

性交経験を答えたくない生徒
(483人)

やか子さん
あら、今度は人の絵がいっぱいですね。あっ、ここに性交経験者の人数が出ていますね。
え~と、経験者は423人! あれ、少ないですね? 5%ですね。私、以前、別の雑誌で見たことがありますが、確か高校生だったら15%とか20%だったと思いますよ。
健先生
そうですね、想像していたより少なかったです。やか子さんが言われるように、性の健康医学財団1)の2011年のデータでは高校生男子の経験率が15%、女子が23%でした。
しかし、その率は現在さらに低下していると言われています。また、性交経験の調査は、どこでどのような環境で調査したかによっても結果は異なってきます。今回は教室内だったので、「答えたくない」という設問も準備しました。同じく5%ぐらいの生徒さんが「答えたくない」に〇をつけられています。
やか子さん
なるほどですね。この図は性交経験の有無とネットいじめの関係ですね。あれ!? ネットいじめを受けた率は、性交経験なしの子の1.5%に対して、性交経験ありの子では5.2%、3倍以上ですね。なぜですか?
健先生
やか子さん、その質問に答える前に次の結果を先に説明させてください。

④性交経験の有無と希死念慮について(回答:高校生7,868人)

やか子さん
今度は、性交経験の経験の有無と「死にたいと思ったことがあるか」の関係ですね。確か、全体の中でも5%の子が「過去に死ぬことを試みたことがある」、そして約20%の子が「死ぬことをときどき思っている」でしたね。
健先生
そのとおりです。棒グラフの右端のねずみ色の部分を見てください。
性交経験のありの方の10%が「過去に死ぬことを試みた」と回答しています。性交経験のない方の2倍です。
やか子さん
まとめると、性交経験のある高校生は、健康感は普通だけど、ひとりぼっちと感じたり、ネットいじめを受けていたり、死にたいと思う率が、2~3倍高くなるということですね。先生、どうしてですか?
健先生
アンケート調査だけで原因を追究することはできませんが、いろいろな関係を観察することはできます。
「性交経験」「ひとりぼっち」「いじめ」「死にたい」、これらと強い関係があったものがありました。それは「1日のスマホ・ネットゲーム利用時間」でした。利用時間が6時間以上の子は、1時間以内の子に比べ、性交経験が6倍、ひとりぼっちが3倍、いじめが3倍、死にたい気持ちも3倍でした。
やか子さん
つまり、ひとりぼっちだから、死にたいと思うから、スマホを頼りにする。スマホを利用する時間が長いから、ネットいじめに合う危険性も高くなるかもしれない。そして、性交経験の機会もスマホ利用で増える……。
健先生
ええ、やか子さんが言われたように解釈できる面もあると思います。
やか子さん
なんかいつも、スマホが悪者になりますね。え~と、次は、わぁ~数字がいっぱい!

性交経験の有無と悩みの割合について見てみましょう

⑤性交経験の有無と思春期の悩みについて(回答:高校生7,352人~7,418人)

やか子さん
これは何ですか?
健先生
19種類の悩みに対して、性交経験のあった方とない方、それぞれ何%の方がそれぞれの悩みをもっておられたか調べました。
やか子さん
ほとんどの項目で性交経験ありの方のほうが、悩みの保有率が高いですね。とくに性に関することの悩みは、え~と、表から計算すると……わあ~10倍から30倍も多いですね。
健先生
そうですね。悩んでいるということは、関心があるということでもありますから、性交経験のある高校生が、ちゃんと性、性感染症、人工妊娠中絶、妊娠出産について関心や注意をもっているということは、ある意味いいことだと思います。
やか子さん
健先生……ポジティブ……。さて、次が最後のグラフになりますね。多分、最後だから健先生がもっとも伝えられたいことですね。
健先生
やか子さん、ありがとう。そうなんです。

学校での保健指導と性体験の有無について見てみましょう

⑥性交経験の有無と性教育について(回答:中学1年生~高校3年生)

やか子さん
これは性教育、つまり保健指導ですね!
習った、習った!中学生、高校生のときに女子だけで!ところで、このグラフが意味するところは何ですか?
健先生
学校で習った性教育の内容と、それらについて「習った」と回答したお子さんの率を学年別に記載しています。ミドリで示すのが命や身体について、ピンクで示すのが先ほどの性感染症、人工妊娠中絶、妊娠出産など主に性に関することです。
やか子さん
ピンクのグラフが、中学3年から高校1年にかけて急に上昇していますね。
性についての知識を習得された……あっ!つまり、学校で教わったということですね。そうか、その時期に教えてもらったからですね。
健先生
正解です。教えられることによって、習得されていくということです。教育、ここでは保健教育の大切さをこのグラフが教えてくれていると思います。あたり前のことなのですが、このように数字やグラフにでてくると、改めて教育の大切さを感じました。
やか子さん
教育によって、思春期の危険行動も予防できるかもしれないということですね。健先生、長い間、ありがとうございました。この子が思春期になる前に、お話しできてよかったです。ちゃんとパパにも伝えますね。家族の会話が大切なこと、ちゃんと大人たちが子どもたちにいろいろ教えていかないといけないことがあるってことを。
健先生
6シリーズにわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に、やか子さんが言ってくださったように、今回の調査で「家族の会話」と「教育」の重要性を感じました。でも、私たち大人も家族がどのように会話をしていったらいいのか、どのように教えていったらいいのか悩んでいるのではないかと思います。

学校教育だけに頼るのではなく、家庭教育、コミュニティでの教育も充実させていくことが必要だと思います。今回連載中にマスコミの方から取材を受ける機会がありました。ネット依存のご質問をいただきましたので、最後に少し今回の調査で得られたスマホ・ネットゲーム利用の時間と思春期の課題の関係をお示ししました。スマホは悪者でなく、保健教育の分野にもスマホに活躍してもらえるようにできればと思います。

1)性の健康医学財団ホームページ


※本成果物は、平成28年度厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業の助成及び健やか親子21推進協議会の協力を受けて作成したものですが、記述内容につきましてはあくまでも当研究班の見解となります。

ご意見お待ちしております


今回のアンケート調査結果や、思春期の保健課題など、皆様からご意見がいただければ幸いです。
ご意見投稿はsukoyaka@kurume-u.ac.jp(久留米大学 研究班)までよろしくお願いいたします。